昔話の中には「ねことねずみは何故仲が悪いのか」といった自然界の強弱関係を言い伝えたものが数多く残されています。
今回は山形に伝わる民話から、「からすとたにしの歌くらべ」というお話を紹介します。

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「カラスとタニシの歌くらべ」
ある天気の良い日、からすがたにしをひろって食べようと思い田んぼに行ったんだと。
すると田んぼにはたにしが一匹一休みしていた。 からすがたにしを食べようと近づいたところ、たにしはこんな歌を歌い始めた。

♪~ からすどのとはおまえのことか
身体の羽根色つくづく見れば
びろうど衣装を着たようだ
かおいかおいと鳴く声聞けば
八幡林のせみのようだ            ♪~

ほめられたからすは、たにしを食べるのをやめて杉の木に止まると、かおいかおいと良い声で 鳴き始めた。
するとそのまま黙っていれば良かったのに、たにしが今度はこんな歌を歌った。

♪~ からすやろうとは汝がことか
身体の正体つくづく見れば
炭焼きじさまの着物のようだ
かおいかおいと鳴く音聞けば
こわれたやかんの河原ひきずるようだ               ♪~

これを聞いたからすはかんかんに怒り、いきなりたにしをつかむとぱくりと食べてしまった。
それからというもの、からすはたにしを見つけると、すぐに拾って食べるようになったんだとさ。
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この話を読むと、昔の人達が田んぼのたにしをついばむからすの姿を見て、こんなにもイメージ 豊かなお話を作ったことに驚かされます。
また、その土地によってこうしたお話がいろいろに脚色 され、微妙に違って伝わっている事も興味深い事です。
モノの少ない時代だからこそ日々の生活に想像力を膨らませ、豊かな心で暮らした昔の人達の営みから私達が学ぶべき事はたくさんあるのではないでしょうか。