皆さんは「ふくろうの染物や」のお話を知っていますか? 昔ふくろうは、自身の体もいろいろな色に染め分け、染物屋をしていたそうです。
とても腕が良かったので、様々な鳥達がやって来て、色をつけてもらっていました。 そんなある日、夕方近くになってカラスがふらりとやって来ました。
ふくろうは今日はもう疲れたから明日にして欲しい」と言って断ったのですが、 カラスはどうしても染めて欲しいと言って、ふくろうをせかし始めたのです。
ふくろうはすっかり慌ててしまい、いろいろな色が入った染つぼをひっくり返して しまいました。
仕方なくその混ざった色でカラスを染めたので、カラスは真っ黒になってしまった というお話です。

このお話の真意の程はどうあれ、確かにカラスほど真っ黒の色をした鳥は、他に 見当たりません。
遠くから見ても、近くで見ても、真っ黒で眼光鋭いカラスの姿は なるほど「ずるがしこい」「コワイ」といったカラスのイメージにぴったりなように 感じます。

しかし、カラスの黒さを例えた表現に「カラスの濡れは色」という言葉があります。
これは、黒の中でも特にその様子が深いことを表す言葉で、日本人の黒髪の美しさを 表す代名詞でもありました。
今は真っ黒の黒髪は重たく見えるということもあり、明るい 色に変える人が主流ですが、海外ではむしろ、カラスの羽のようにつややかで、漆黒の 髪の毛は「オリエンタルビューティー」として高く評価されているのです。 そんな視点から見ると、真っ黒くて他に類を見ないカラスの色は、個性的ともいえるのでは ないでしょうか?