カラスは年中いる鳥なのでそれだけでは季語にならないのですが、季節を感じさせる言葉と合わせて、いくつかの季語として存在しています。
またカラスは「烏」と表記するのが一般的ですが、俳句の世界では「鴉」の語を用いています。
例えば春は「鴉の巣」、夏は「鴉の子」、冬は「寒烏」、新年は「初鴉」といった具合です。

よく知られた俳人で、カラスの句を多く詠んでいるのは高浜虚子です。
かわかわと 大きくゆるく 寒鴉
子鴉を 飼へる茶店や 松の下
初鴉 廓(くるわ)の夜明けも ただならず

また小林一茶のカラスの句には次のようなものもあります。
提灯(ちょうちん)も ちらりほらりや 初鴉

以下にいくつかカラスを詠んだ句をご紹介します。目で読むと共に、声に出して味わってみると尚、 俳句という短い五七五に込められた作者の思い、情景が不思議と心に浮かんでくるものです。

食べ飽きて とんとん歩く 鴉の子    高野素十
寒鴉 己が影の上に おりたちぬ     芝不器男
夜をはなれ ゆく麦の芽と 初鴉     飯田龍太
巣鴉を ゆさぶってをる 樵夫(きこり)かな  大須賀乙字
たそがれの なにか落しぬ 鴉の巣    畑耕一
初鴉 カラス語辞典 編まんかな     永野孫柳

カラスはその印象があまり良くないためか、カラスを詠んだ俳句は多くありません。 これほど人間の生活に密着した鳥ですから、日常の様々なシーンで、季節と密着した姿を見せている はずなのですが、少し残念な気がします。